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ネジマゲラレタサクラ―ビイシキトグンコクシュギ

ねじ曲げられた桜―美意識と軍国主義

桜は万葉集の歌にもよまれ、昔から日本人に愛されてきた。しかし、太平洋戦争の末期には桜が特攻隊のシンボルになっていた。なぜ桜の幹はねじ曲げられてしまったのか。この本は、理想を美化することで狂った政策が国民に抵抗なく受け入れられていった過程をとりあげている。ページ数と専門用語が多く、図書館の返却期限までに読みきるのが大変だった。

桜の花はとても多くの意味をもつ。あるときは米や女性の生産性と結びつけられ、またあるときは芸者や稚児の非生産性を象徴する。生でありながら死でもある。もののあわれから狂気、異世界まであらわす桜の花は、日本の象徴でしかない富士山とは比べものにならない多様性をもっている。しかも、桜の花がもつさまざまな意味は関連してつながっているため、コミュニケーションにおける「解釈のずれ」が起こりやすく、またそのことに気づきにくい。国家が桜をナショナリズムの高揚に利用することができたのはこのためだ。

ひとつの象徴や儀礼から各自が別々の意味を引き出しながらコミュニケーションしている状態を、著者はメコネサンス(méconnaissance=誤認)という用語で説明し、メコネサンスには「美しさ」が重要であるという。

《[…]美的価値は、国民がもっとも大事にしている価値(自分たちの国土・歴史・理想・純潔や犠牲といった道徳律)を表現する象徴に付与される。人々は「美しさ」に反応し、自分たち自身の理想主義と美的価値に応じてそれを解釈するが、その一方で、国家は人々を「動員」するために同じ美的価値と象徴を利用することが可能であるのだ。》

著者は外国で活躍している学者で、この論考には「カミカゼ」のステレオタイプをうちくだく意図もあったようだ。日本兵は軍事政権に洗脳されて天皇のために喜んで死んでいったのだと、海外では思われている。けれども、事実はまったくちがう。それはすでに「はるかなる山河に」「きけ わだつみのこえ」などで明らにされてきた。ただ、これらの遺稿集はある種のフィルターを通した言葉であるため、やや客観性に欠ける。そこで著者は、個人単位でまとまった資料が出版されている5人の学徒兵をえらび(うち4人は特攻隊員)、その日記などから確認できる読書体験に注目することで、彼らが何を考えていたのか分析している。

えらばれた5人はみんなインテリで、フランス語やドイツ語の原書も読んでいた(1300冊をこえる読書リストが巻末にある)。彼らは共通して愛国者だったが、思想的には自由主義者でコスモポリタンだった。この5人にかぎれば「天皇即国家」のために死んだ者はひとりもいない。特攻隊員はその行為によってナショナリズムを再生産してしまったが、その思想においてもそうだったわけではない。国家のもくろみは完全には成功していなかったのであり、ここにも誤認があったと言える。

ねじ曲げられた桜―美意識と軍国主義

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  • 著者: 大貫 恵美子
  • 出版社: 岩波書店
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