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2015/08/27

プライドのコスト

さて久々に宿レポートだ。
今回のメインは球磨川ラフティングで、宿泊はサイドディッシュ扱い。しかし、近隣の温泉地は未訪問の場所ばかりなので、それなりに期待をするのかしないのかやっぱりするのか、そんなテキトーな気持ちで人吉温泉『翠嵐楼』に予約を入れた。
もちろん、これまでのように、それなりに情報を収集した上で現地に赴いたわけだが、この宿では今までにないような雰囲気を体感させられる事となった。

概要はオフィシャルサイトをご覧いただければ把握できるので、現地での印象を中心に。あ、前からこういうスタンスだったっけ。ここで過去日記を読み返さないほど老いた私。(なんちて)
第一印象は、老舗らしく地味な外観。だがそう感じたのは一瞬で、全体を見回してみると、古いながらよく保守されている。また、館内を歩いてみて思ったが、敷地面積はかなり余裕があるように見受けられた。『地味』なのではなくて『低い』だけなのだろう。
スタッフの方々はみな一様に、礼儀正しく穏やかな対応‥‥と、ここまではよく見受けられるが、その先がちょっと違う。腰が低いのではない、愛想が良いのでもない、誇りを持って姿勢よく客と対等に接する感じだ。
客室は12畳の和室、露天風呂付き。畳は新品に交換されたばかりのようで、気分がいい。何せ人吉温泉街の端、球磨川沿いに位置しているので、夕方ともなれば非常に静かだ。ただし、建物の設計が古いせいだろう、どこかの外部ドアの開閉音が筒抜けだったり、トイレの換気扇が轟音を立てたり、という瑣末な音害?はある。

一息付いてから、いつものように大浴場へ。
ラフティングの疲れから、展望風呂へは行かず地下浴場に向かう。『上がる』より『下がる』方が楽そうな印象というわけだ。
この地下浴場が、人吉温泉のルーツとなったらしい。地階に降りて、更衣室から浴室のドアを開けると、更にやや急な階段を降りて浴場にたどり着くというレイアウトだ。恐らく開湯当時、温泉が湧出した、まさにその場所を整備して浴場に仕立てたのだろう。地階とは言っても、建物自体が堤防裏に掘り下げられた溝(?)に一部垂れ下がったような構造になっていて、その垂れ下がり部分を地階と称しているようだ。なので、普通に外光が届いてくる。
設えは当時のままだそうで、どこも磨き上げられ、周囲はガラス窓に囲まれてとても明るく、シンプルかつ機能的、レトロモダンなデザイン‥‥いや、レトロ=懐古調、なのではない。本当に古いのだから。
湯はあっさりとした感触で、川冷えした身体をやさしく緩めてくれる。極楽。

夕食はスタンダードな会席料理だ。しかしここでも、老舗の誠実さを見せつけられた。
何せ、素材が天然モノ&自家製のオンパレードなのだ。塩焼きのアユや唐揚げのヤマメは身が締まって風味が濃く、野菜を食べれば『近所の畑で採れた』的味わいがあり(自家菜園で採っている由)、米は自家水田のユメヒカリ、食前酒は女将の手作り梅酒、他の食材も大半が地元産らしい。
量は、成人男性なら腹八分〜満腹一歩手前くらいだろうか。これで全く問題ないし、大食いでも別注料理がたくさん準備されているので安心だ。
そうそう、チェックイン時にウェルカムかき氷をいただいたが、これも氷がまろやかな味で、後から別注料理のメニューに『温泉かき氷』を見つけて納得した次第。

球磨焼酎でノックアウトされて早々に寝床につき、目が覚めたのが1:30。いつもの客室露天タイムに突入する。
露天は後から増設されたようで、猫の額ほどのスペースだが、設えはけっこう立派である。しかも、露天風呂なので外柵と屋根の間は空いているわけで、内側の照明を灯したままだとカゲロウが大挙して押し寄せそうなものだが、それがほとんど入ってこない。
どうも、照明の配置を工夫して、なおかつ外柵のすぐ内側に植わった灌木が、光をほとんど外部に漏らさないようにしているのだろう。よく考えられている。
この季節は夜間が涼しくなってきて、洗い場に寝そべると心地良くクールダウンできる。入湯とクールダウンを3度繰り返し、心底リラックスして寝床に戻った。

他に細かいところでは、ハンドタオルに入れられた宿名は印刷ではなく刺繍だったり(しかも複数色ある)、風呂の腰掛と桶は全て木製(古さが汚く感じられる前に新品へ交換)、どこもかしこも清掃が行き届き(露天の立木にクモの巣があるのはご愛嬌)、クジャクが飼われていたりテニスコートがあったりする事が昔のリゾートを彷彿とさせたり‥‥とまあ、このイマイチな人気の人吉温泉で、この内容で1万円台半ばで宿泊できるのだから、よくも頑張っているものだと感心させられる事ばかり。
ここからは勝手な推測:宿としては客単価を上げて、その収益でもっとあちこち補修したり、もっと良質な食材を使ったりしたいだろうが、不人気な地域でこれ以上宿泊代を上げると、客足はガックリ遠のいてしまうだろう。限られた収入で、しかし人吉温泉の開祖として誇れる宿を維持するため、今の状況はギリギリのところなのではないかと思う。
私だけでも、どんどんアピールしていきたい。ここはいい宿だ。間違いない。お手頃値段なりに俗っぽさは散見されるが、それで落胆させられるような薄っぺらい宿ではない。高額ではない高級宿‥‥いわゆるクラシックホテル、『品格ある宿』と呼んでも良いのではないだろうか。
丸長旅館と同様に、リピートのリストに加えよう。

コメント(2)

2015/08/28

雲衣。 バスターさま。 お久しぶりです お元気そうで安心しました。もはや「超」がつくほど出不精であると同時に 年齢相応に読み巧者となった老生は文章でも充分な旅情を味わえるようになっていますので「宿レポート」ぜひまたお願いします。

バスター こちらこそ大変ご無沙汰しております。付き合いの関係でfacebookに軸足を移しておりますが、また良宿に出会えたら駄文を投稿しますので、ご笑覧下さい。

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バスター画像 ディレッタントへの道さえ険しい、男・40代・自営業者。 福岡県北九州市に在住。 『カーボン子爵』の... もっと見る

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